Roux OH上達法

この記事は、2022年8月にスピードキュービング大学にて執筆したものです。当サイトの閉鎖により、こちらに記事を移行します。

はじめに

こんにちは、鉄Cuberという者です。1年ほど前からRoux MethodでのOHをメインでやっていて、ついに、ao100でsub15を達成しました!

これまでの経験を踏まえて、Roux OHで速くなりたい方へ向けて必要な知識や練習方法について書いていきます。

この記事では、Roux Methodでキューブを揃えることができ(2 Look CMLLでも可)、Roux OHでsub20~sub15程度まで速くなりたい方を対象としています。現在のタイムは問いません。

まずRoux Methodで揃えられない方は、こちらの解説動画をご覧ください。

【ルービックキューブ】Roux Methodを解説!(前編:FB,SB,CMLL)

【ルービックキューブ】Roux Methodを解説!(後編:LSE M列右手用)

【ルービックキューブ】Roux Methodを解説!(後編:LSE M列左手用)

片手におすすめのキューブ

もちろん上級者はどんなキューブでもある程度使いこなすことができます。しかし、まだ片手で上手く回せない段階では、片手で回しやすいキューブを使って練習するのが良いでしょう。(慣れてきたらあえて苦手なキューブも使ってみると、良い練習になります。)

そこで、筆者が片手におすすめするキューブをいくつか紹介します。あくまで個人の感想ですので、できればいろんなキューブを買ってみて、自分が良いと思ったものを使うと良いです。

DaYan TengYun M: 筆者がメインに使っているキューブです。回転はかなり軽くM列が簡単に回せますが、磁力が極めて弱いです。磁力が弱すぎるので安定感に欠けますが、コーナーカットが広いことで、欠点を補っています。TORIBO / smartship

MoYu WeiLong WR M: 残念ながら生産中止で入手困難になってしまいました。回転は軽いですが、直線的で角が立った回し心地です。M列も簡単に回せます。磁力はちょうど良いぐらいの強さです。世界トップのOH Rouxerはこれを使っている方が多い印象です。TORIBO / smartship

Cubing Classroom RS3M 2020: 基本的には回転は軽いですが、少し粘り気のある回し心地で、M列が若干重いです。磁力はちょうど良いぐらいの強さです。最近OHでとてつもない記録を出しているFahmi Aulia Rachmanさんはこのキューブを使っています。TORIBO / smartship

指使い

片手で重要なのは、指使いです。最初のうちは上手く回せなくてできないと思いますし、良くない指使いをしている場合もあります。そのため、OHで使う指使いを一通り確認しましょう。

ホールド

まず使う手ですが、左手がおすすめです。普段両手で解くとき、左手でホールドをして、右手主体の手順を回すことが多いと思います。片手で回すときに、右手主体の手順を適用しやすいのが左手なので、左手をおすすめします。それでも右手で回したい方は、普段と左右対称の手順を使います。以降、左手で回すことを前提に話を進めます。
ホールドですが、親指で手前右下2×2ブロックの真ん中らへん、中指と薬指の両方、または中指のみ、または薬指のみで後右下の2×2ブロックをホールドします。中指と薬指の位置については、本当に人に依るので、自分がしっくりくるものを採用してください。

U面・R面

U面・R面の回転はOHの中でも基本的な指使いになります。何度も何度も練習して体にしみこませてください。

  • U’: 両手の時と同じように、人差し指でトリガーします。
  • U: 人差し指を手前に持ってきて弾くか、L面の後ろ側を押し込むようにして回します。
  • R: 小指または薬指でR面をトリガーします。
  • R’: 小指または薬指を手前に持ってきて弾くか、D面の後ろ側を押し込むようにして回します。

まずこの4つが基本になります。選択肢が複数あるものもありますが、最初に書いてある方がより一般的です。例えばUだったら、押し込みよりも弾きの方が一般的です。参考にしたうえで、自分に合ったものを選択してください。
練習方法としては、セクシームーブ(R U R’ U’)などを何度も繰り返すのがおすすめです。

最初は特にR’が回しにくいと思います。やりがちなのは人差し指をR面の後ろ側に持ってきて手前に回すという指使いです。部分的に使った方が良い場面もありますが、基本的には上に書いた指使いを使うようにしてください。

  • R2ダブルトリガー: 小指→薬指あるいは薬指→小指の順でダブルトリガーをします。薬指のみをホールドに使っている方は使えません。中指と薬指でホールドしている方は、一時的に中指のみのホールドになります。
  • U2’ダブルトリガー: 人差し指→中指の順でダブルトリガーをします。中指のみをホールドに使っている方は使えません。中指と薬指でホールドしている方は、一時的に薬指のみのホールドになります。
  • はらいU2’/はらいU2: ダブルトリガーの代わりに、はらいU2を使うという手があります。中指をホールドに使ったまま、U2を回すことができます。
    この3つは発展的な指使いで、絶対これを使った方が良いとも限りません。ホールド的にトリガー2回の方が良い場合もあります。

Rw系・M列

RU系に加え、Roux OHで肝となる指使いです。

  • Rw: ホールドを少し左にずらして、小指または薬指でトリガーします。
  • Rw’: ホールドを少し左にずらして、小指または薬指を手前に持ってきて弾くか、D面の後ろ側を押し込むようにして回します。
  • Rw2: 小指→薬指あるいは薬指→小指の順でダブルトリガーをします。
  • M’, M, M2′: キューブの右下の辺を机にあてて、Rw系と同じように回します。ただし押し込みを使っている方は、押し込みでMを回すのは難しいのでこれに限って小指で弾く指使いを使うという手もあります。

L面・D面

  • L面: z持ち替えして、U面を回すように回します。
  • D: 薬指でトリガーをするか、z’ Rのように回します。
  • D’: 薬指で押し込むか、z’ R’のように回します。
  • D2′: 小指→薬指あるいは薬指→小指の順でダブルトリガーをします。

片手ではz持ち替えが容易なので、RUL系の手順やRUD系の手順は比較的回しやすいです。

F面・Fw系・B面・S列

  • F: 親指を左下から押し上げるように回します。
  • F’: 人差し指で左上を弾く(ミハエルトリガー)か、親指で左上から押し下げるように回します。
  • Fw: 人差し指でL面側からS列を押し込むように回します。
  • Fw’: F’のミハエルトリガーと同じような感覚で、人差し指で上側からS列を弾きます。こちらは親指で押し下げるのは難しいです。

その他

  • Uw系: ホールドを少し下ずらして、U面と同じような感覚で、人差し指あるいは中指でE列を回します。
  • B: z’ Fwのように回すか、人差し指を左後ろ側にもっていって押し下げるように回します。後者はかなり難しいです。
  • B’: z Fw’のように回します。
  • S’: 親指でF面に少し力を入れて、Fw’と同じように人差し指で上側からS列を弾きます。

一通りOHの指使いを列挙しました。発展的な指使いもあるので、もちろんいきなりすべて使える必要はありませんが、赤文字で示したものは最低限回せるようにしましょう。

ステップ別tips

FB

FBでは、とにかく1x2x3のブロックを作ります。その自由度ゆえ、初心者から上級者まで、Rouxerを苦しめる存在だと思います。どんな場合でもインスペクションで完読みし、10手以内で揃えたいところです。

Rouxでは完全なCNである必要はありません。D面色デュアル(例えば白・黄)で側面色自由の8通りできれば十分です。完全CNはSBやLSEなどでデメリットが大きいと思います。

インスペクションでの思考過程ですが、既にあるブロックを探します。ブロックがあれば8通りのFBのうちから、1通りか2通りに絞ることができるので、残りのパーツを探して効率のいいFBを考えます。完バラスクランブルの場合は、気合で作るしかないです…。完バラの場合のみ色を固定しても良いと思います。

FBの作り方は本当に自由なので、体系立ててFBの作り方をまとめることはほぼ不可能です。上級者のExample Solveなどをたくさん見て自分なりに技術を吸収してください。
また、さらに余裕があればDRエッジの位置も読むと良いと思います。

SB

SBはRrMUgenで揃えられるので、OHにおいてはボーナスステージです。SBは比較的F2Lに近いですが、M列が空いているのでより自由なスロットインが可能です。SB特有の定石のパターンについては、SpeedCubeDBにSBLS(Second Block Last Slot)の手順表があるので、参考にすると良いと思います。

CMLL

CMLLの判断ですが、まずは自分で判断基準を決めてください。判断基準の例を以下に示します。

そして片手用のCMLLを覚えていない場合は覚えましょう。Kianのサイトの手順表がおすすめです。両手用のCMLLを既に覚えていても、中には片手で回しにくい手順もあるので、片手用のCMLLも覚えていきましょう。両手CFOPで片手のためにRouxをやる場合はいきなり片手用の手順を覚えてしまって良いと思います。

そしてCMLLの中でも一部の手順はエッジの移動が簡単なので、EOあるいはEOLRを読むことができます。慣れてきたらCMLL前にEOやEOLRを読んで、間髪入れずにLSEに移行しましょう。

また、一部のパターンではCMLLを使い分けることでEOをスキップさせたりArrow(解説動画では基本形として紹介しました)を出現させることができます。簡単なものだと、U対角での6手OLLの使い分け、Sune無交換でのFat Suneなどが挙げられます。

LSE

LSEにおけるキャンセル

LSEの基本的な流れ(EO→LR→L4E)を抑えたうえでまず知って欲しいのは、LSE特有のキャンセルです。

例えばULURエッジを対角の位置に持って行ったとき、この2つをペアにするときは上側にある方のULURエッジを押し上げるようにしてペアにする方法と、押し下げるようにペアにする方法があります。写真左側のように、上側のULURエッジが同色のヘッドライトに挟まれている場合、押し上げるようにペアにするとキャンセルが入ってそのままULURを揃えることができます(この写真の場合だとM’ U2 M’)。また写真右側のように、上側のULURエッジが対色のヘッドライトに挟まれている場合、押し下げるようにペアにするとキャンセルが入ってそのままULURを揃えることができます(この写真の場合だとM U2 M’)。

ULURを揃えた後L4Eを読むことができると、ここでもキャンセルが入れられます。写真のパターンの場合、M2 U’でULURを揃えると平面交換のパターンになるので、キャンセルを入れてM2 U M2 U2と揃えることができます。

平面交換とセンター交換の場合は先読みが比較的簡単ですが、3点交換の先読みは少し難しいです。自分もこれはなかなかできず研究段階なのですが、できる方はほぼ100%読むことができるそうなので、一度自分でパターン化して確認すると良いと思います。

センター交換回避

ULURエッジを揃える前に、センター交換が来ると分かった時、回避することができます。

ULURがD面に配置してあってM2で揃うときは、U2 M’ U2 M2 U2 M’と回すと揃います。
ULURが対角の位置にあって、上側のULURエッジが同色あるいは対色のヘッドライトに挟まれている場合は、キャンセルが入る方とは逆のやり方で揃えるとセンター交換を回避できます。例えば写真の場合、M’ U2 M’でそのままULURを揃えるとセンター交換になってしまいます。ですがここで、M U2 M U2 M2と、あえて遠回りをして揃えるとセンター交換を回避できます。

EOLR

EOLRとは、EOを揃えると同時にULURエッジをD面に配置させる(場合によってはキャンセルが入ってそのままULURが揃う)substepです。両手では有用性が疑問視されていますが、片手では非常に有用です。EOLRはLL手順などとは違い、F2Lに近いものなので、楽しく覚えられると思います。EOLRについては素晴らしい記事が既にあるので、そちらをご覧ください。

EOLR入門 – タニシ・キューブログ

タイム別アドバイス

Roux Methodの各ステップで習得すべき知識を確認したところで、タイム別にどのような練習をすればよいのか、具体的に伝えたいと思います。

~40s

まずは指使いに慣れましょう。指使いのところでも書いた通り、R U R’ U’などの基本的な動きを繰り返すなど練習すると良いと思います。あと最初はM列の指使いにも苦労すると思います。こちらもM’ U’ M UやM’ U2 M U2など基本的な動きを繰り返し練習すると慣れてくると思います。

40s~30s

F2Bを効率よく作ることを意識しましょう。インスペクションは無限でいいので、効率の良いFBを読みましょう。SBも定石を少しずつ増やしましょう。いいやり方が思い浮かばないものから、潰していくのもアリです。

sub30するのに必須ではありませんが、CMLLを覚え始めても良いと思います。

30s~25s

CMLLをまだ覚えていなければ覚えましょう。両手用のCMLLを使っている場合も、片手専用の手順を覚えた方が良いパターンも多いです。
ここまでくると、F2Bはある程度慣れてきて、判断もそこそこの速さでできるようになっていると思います。ですがF2Lにとらわれて、非効率な手順を使っていることがあります。SBLSの手順表と自分の手順を比べて、必要があれば揃え方を変えてみましょう。F2Lとはまた違った楽しさがあります。

25s~20s

このあたりからは先読みも大事になってきます。手が止まりやすいのはFBからSBのつなぎ、SBの途中、CMLLの判断、EO(EOLR)の判断、L4Eの判断です。このうちCMLLの判断については先読みが難しいですが、他は改善することができます。インスペクションでDRエッジの位置を読む、SB中に次のパーツを探しておく。CMLLにおけるエッジの移動を覚えてEO(EOLR)を読む、ULURを入れる前にL4Eを読むことができるようパターンを整理する、などの工夫が挙げられます。もちろんいきなりこれらができるようになるわけではなく、日ごろからの練習を積み重ねることで得られるものですが、このあたりを意識することで、一気にソルブが改善されると思います。

ちなみに、片手は両手よりも回す速度が遅いので、先読みが簡単です。これを利用して、いかに先読みできるかが鍵となってきます。

また、このあたりからEOLRを始めると良いと思います。使わなくてもsub20はできますが、使えると非常に便利です。

20s~16s

よほどtpsが高い方でなければ、sub17~sub16あたりを目標にしたときEOLRは必須の知識だと思います。また、EOLRを使うにしても判断に時間がかかってしまうと意味がないので、CMLLを回す前にULURエッジの位置は確認しましょう。もちろんEOLR読めると良いですが、読めない場合もCMLLを回しながら目で追うだけでも変わってきます。
細かい点ですが、改めて指使いを増やすことができないか確認しましょう。おそらく基本的な指使いはできていて(万が一変な癖があればすぐに直して下さい)いると思いますが、発展的な指使いも試してみましょう。ダブルトリガー、F面やB面の回し方など、タイムに寄与するのはコンマ数秒単位かもしれませんが、試してみると良いと思います。

16s~

現在の筆者が約15~16秒程度の実力ですが、まだまだ自分のソルブは伸びしろだらけだと思っています。そこで、自分が課題だと思っている点について共有します。

  • FB~SBにおける先読み: sub17になってもFBからSBのつなぎやSBの途中で止まっていることが多々あります。F2Bを一切止まらず回せるだけで、sub14程度は余裕だと考えています。
  • CMLL判断: CMLL判断に少し時間がかかることがあります。特にSuneとAnti Suneに関しては1つの面からしか判断できず、無駄なAUFが発生しています。できればどの面からでも判断できるよう、判断基準を増やしたいと思っています。
  • EOLR後のL4Eの先読み・センター回避の判断: L4Eの判断でやはり手が止まっています。ULURエッジを入れる前に読めるよう、パターンを自分で整理したいと思います。キャンセルやセンター回避も100%できるようになりたいです。

終わりに

最近ではRoux Methodの片手での有用性が徐々に認知されつつあり、世界でも使用者が増えてきています。皆さんがOH Rouxを練習するにあたって、この記事が役に立てれば幸いです。